ベイビー•プロポーズ

「……じゃあ、午後にしようかな。なんか今は並びにくいし」


私たちを完全に傍観していた美郷と優弥へ視線を送れば、2人共笑顔で了承してくれた。


「わかった。じゃあ午後にもえの執事になる」

「その言い方は語弊がありまくりでしょ」

「俺はもえだけの執事だよ」

「ていうか、黎だけそんなに自由にしてていいの?」

「うん。俺は今日来てるだけで偉いから大丈夫」


決して胸を張って言えることではないと思うんだけど……。


堂々と自分を偉いと褒めたたえる黎はどこか得意げに、表情は無のまま顔の横でピースサインを作った。


その姿がなんだか可愛くて。思わずくすっと吹き出すと、笑った私の顔を見つめる黎の口元が微かに緩み表情が和らいだ。


"かわいい"


言葉にされたわけじゃない。


自意識過剰かもしれないけど、その表情や視線から黎の心の内が伝わってきた。


そんな私たちのやり取りを目の前で見ていた女の子はようやく、「獅子堂くん」と弱弱しく声を出した。


「私、獅子堂くんと同じ時間に当番ができるの、すごく楽しみしてたの」

「そう」

「どうしても、だめ?」

「無理」
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