ベイビー•プロポーズ
2人に背中を押され、黎と一緒に周ることになった文化祭。
私はもちろん、黎と一緒に文化祭を回ることになるなんて思っていなかったんだけど、どうやらそれは黎も同じようで。
廊下を2人で歩いていた時も、3年1組のお化け屋敷に並んでいた時も、ずっと黎はそわそわと落ち着かない様子だった。
――というのも、きゅっと結んだ唇をもごもごと動かし、頻りに横にいる私へちらちらと視線を送ってきたから。
「どうしたの?」と黎に問えば、「もえと並んで学校にいるの、夢みたい」とその余韻を噛みしめるようにゆったりと瞬きをしていた。
「ん~!たこ焼きおいしっ」
「……」
四方八方、校舎と木々に囲まれた広めの中庭。外の屋台で焼きそばやたこ焼き、かき氷を購入しこの場所へとやってきた。
ちょうどお昼時ということもあってたくさんの人が中庭に集まっていたけれど、運よく2人掛けのベンチが空いていて。早速まだ焼きたてほやほやのたこ焼きを頬張りながら、私をじっと見つめる黎へ首を傾げる。
「ん?ほら、黎も早く食べようよ」
「かわいい」
「……」
「いっぱい食べていいよ」
「……、そんなにじーっと見られると食べにくい」
「ごめん、嬉しくて」
降り注ぐ直射日光よりも熱い視線をひしひしと感じる。