ベイビー•プロポーズ
んー……あれ、身体が、動か…ない。
半分眠ったままの脳内が「金縛りだ!」と錯覚を起こし、それを解こうと無意識に念仏を唱え始める。
しかし、いくら南無阿弥陀仏…と唱えたところで身体は1ミリも動かない。
とりあえず深呼吸を。と深く息を吸い込もうとした時、すーっ、と自分のものではない呼吸音が耳元に届いた。
――意識が徐々に覚醒していく……
「――はっ!」
完全覚醒。
目をがっと見開き、1番初めに飛び込んできたのはいつもの真っ白な天井ではなく、いまだ部屋に置かれたままのホワイトベージュの学習机だった。
背後から聞こえるすー、すー、とゆったりとしたリズムの寝息。上半身を覆うように巻かれた腕の感覚。両脚を挟み込むように絡められた足の感覚。
「黎!!!」
今の状況をようやく把握した私は、薄手のブランケットの下で私をがっしりとホールドする大男の名前を叫んだ。
ズキリ、こめかみの辺りが重く痛む。
昨日は椎菜のお祝いでバド部で集まって、居酒屋はしごからのカラオケに行って……まずい、どうやって帰ってきたかの記憶がない。
どうして黎が私のベッドに……?
――なんてことは思わない。この状況的に、酔っぱらって動かなくなってしまった私の迎えを椎菜が碧葉に頼んだ。碧葉から連絡をもらった黎が私を迎えに来た。そして同じベッドにイン。安易に予想がつく。