ベイビー•プロポーズ

「ねぇ!黎!」

「黎くーん!苦しいから離してー!」

「おい!黎起きてよっ!」


どんなに叫ぼうが、どんなに身を捩らせ暴れ回ろうが、黎は変わらずゆったりとした寝息を立てている。


確かに黎は眠りが深い方だけど、こんなに起きないなんてことある?


まさか狸寝入りしてるんじゃ…?と唯一動く顔をぐるりと半回転させた。


ち、近い!


まだ頭は寝呆けているのか背後との距離感が掴めておらず、振り返ってすぐ目線の高さには黎の唇が。


少し首を下に向け口をうっすら開けながら寝息を立てている様子から、黎は完全に白。本当に眠っているようだった。


爆睡してるのにどんだけの馬鹿力を私に使ってるんだ!と無防備な寝顔に睨みを効かせる。


我が家のリビングのソファで眠っているところは何度も見かけているけど、こうして至近距離で寝顔を見るのは初めてのことだった。


普段よりも幼さが増しているようにも感じる黎の寝顔に思わず「かわいいな」と声を漏らしていた。


この距離で見てもきめ細やかで透き通るような白い肌。やや開かれた唇は薄くて血色がいい。


まさにジャイアントベイビーだ。


あどけない黎の寝顔に、なんだか胸の奥がくすぐったいような……なんとも表現し難い気持ちに襲われた。
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