ベイビー•プロポーズ
数秒、いや、数十秒見つめあったのち、少し腰を浮かせた黎は私の方へと身体を寄せた。宙ぶらりんになっていた黎の左手が私の頬へと添えられる。
「ずっと思ってた」
「……」
「寝てるもえじゃなくて、ちゃんと起きてるもえと、同意のあるキスがしたいって」
「黎、」
「ねえ、もえ」
「なに?」
「キス、していい?」
すり、と親指で撫でられた部分がじわじわと熱を帯びていく。その熱が顔全体、そして身体中に広がる。
考えるよりも先に「いいよ」と口が動いていた。
黎が喉を鳴らした音と自分の心臓の音だけが、やけに鮮明に聞こえた。
「好きだよ、もえ」
微かに震えているその声を合図に、そっと瞼を閉じた。
柔らかな感触が唇にのってすぐ、「ああ、もうだめだ」と心の中で白旗を挙げた。
――――好き、