ベイビー•プロポーズ
自分の気持ちを素直に伝えて、黎と付き合ったとして。その後にもし、年齢差を理由に黎に捨てられてしまったら……、想像するだけで怖かった。
だから好きに向かって一直線だった自分の気持ちを無意識に断ち切って、その気持ちを無かったことにした。黎と一緒にいると時折見え隠れする気持ちを心の奥底に押し込んで、自分さえも騙してた。
そうした方が楽だった。リスク回避、といえば賢く聞こえるけど、ただ私は自分勝手に黎から逃げ続けていただけだった。
さっきよりも長めのフレンチキス。名残惜しむように、私からそっと唇を離した。
自分の気持ちを素直に認めてしまえば、身体全身が好きの気持ちでいっぱいになった。だけどその好きが口から出ていくことはなく、
「ごめん」
零れたのは謝罪の言葉。
至近距離にある黎の目を見ることができず、未だ繋がれたままの手へと視線を落とした。
この後に及んで私は、起こるかも分からない被害妄想の未来を怖がっているらしい。
手を伸ばせばすぐ届くところにある幸せを掴むことのできない、拗らせまくりの臆病者だ。