ベイビー•プロポーズ
目の前のあおのことも忘れて脳内はお通夜モード。木魚の幻聴まで聞こえる。
「萌葉ってまじでバカだよな」
ぽくぽく、と軽快な音の合間にあおの声が入りこんできた。
「もえはバカじゃないよ。全部俺が悪い」
「どうせあいつのことだから年の差が~とかそんなことばっか気にしてんだろ」
「もえは年上の男が好きだからね」
「そんなのダミーだから」
「?」
「もうさ、最終手段でさっきの藤田を使えよ。付き合うことにしたとでも萌葉に言ってみたら?なんなら俺も話合わせるし。そしたらさすがの萌葉も焦んだろ」
もえからの嫉妬は正直嬉しい。だけど、俺に振り向いてくれないからといってわざと試すようなことはしたくない。それ以上に嘘でも、もえ以外の女と付き合うなんて口にしたくない。
「やだ」と即答すると、唐揚げを頬張っていたあおは数回瞬きを繰り返し、感心したように「一途だな」と呟いた。
「黎はさ、萌葉以外を見ようとは思わねぇの?」
「ない」
「小学生の頃からずっと萌葉だけだろ?よく飽きないねえ」
「もえ以外興味ないから」
10歳の時、初めてもえを見たあの日から俺にとってもえは唯一の存在。俺の特別はもえだけだし、この先もえ以外好きになることはあり得ない。どんなことがあってももえだけが好き。
……、もしかしてこれが良くなかったのか?一方的に気持ちを押し付けすぎた?