ベイビー•プロポーズ

エピソード6



「んー、伊藤は今週ちょっとミスが目立つなあ」

「……すみません、」

「先方には俺からも謝罪のメールは入れておくから。次はしっかり確認するように」

「お手数おかけしてしまって本当にすみません……」


普段であれば心躍るはずの金曜日。部長直々にお叱りを受けるのは経理部に来て初めてのこと。


報告書類の金額入力ミスに始まり、請求書のご送付、二重計上と立て続けにミスを繰り返した今週の私。週初めから絶不調の私の心は深く沈んだまま、上昇する気配はない。


「それにしたって今週は沢城も伊藤も、らしくないミスが続くよなあ」

「え……?沢城先輩も、ですか?」

「ああ、二重計上を2件やらかしてる。あいつが凡ミスするなんてほんと珍しいんだけどなあ」

「確かに、それは珍しい」

「2人共今週ずっと顔色良くないし、お前らの席の辺り空気の巡りが良くないんじゃないか?」

「……あ、はあ、」


部長の視線が私からデスクの右上へと移動する。


部長のデスクに並べられているのは手の平サイズの観葉植物たち。等間隔に5つ並べられたその内の2つを手にとった部長は「これ、特別にあげるから。1つは沢城に渡してやって」と私の前に差し出した。
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