ベイビー•プロポーズ
左手で顔を触れながら「ボロボロですか……?」と問えば、「かなり」と即答で返された。
「恥ずかしい話なんですけど……、私も恋愛系で悩んでて、」
どうしてこんなこと、沢城先輩相手に言ってしまっているんだろう。
比較的落ち着いている脳内とは裏腹に、「前に偶然お会いした時に私が一緒にいた子、いるじゃないですか」と言葉を続けていた。
時刻はまだ午前10時を回ったところ。始業開始1時間ということもあって、この休憩スペースには私と沢城先輩の2人のみ。
黎とのこれまでの出来事や自分の思いをノンストップで話し続けている間、沢城先輩は黙ったまま只々聞いてくれていた。
「――、てな感じなんです」
「……」
「……」
「……」
「……うわぁ、すいません。なんか話すぎちゃいました、ごめんなさい」
沢城先輩の重く鋭い視線が下から突き刺さる。はっと我に返り、穴があったら入りたい衝動に駆られる。
私と沢城先輩は隣の席の先輩後輩という間柄ではあるけれど、こんなプライベートな相談をするような仲では当たり前にないのだ。それなのに私のどうでもいい恋愛相談を聞かせてしまった。恥ずかしさと申し訳なさから、静かに頭を下げる。