ベイビー•プロポーズ

「萌葉、きついこと言ってごめん。でもまあ……、こういうことだから」

「でもあお、あの言い方はひどすぎる。何回か飛び出しそうになった」

「俺だって心を鬼にして言ったんだからな。けど結果良かっただろ?萌葉の本音引き出せたんだから」

「っ、ちょっと、待って……、」


2人の会話を制止して、満足そうな笑みを見せる碧葉へ戸惑い気味に視線を向ける。


「今の状況がぜっんぜん理解できないんだけど……。なんで、黎がここにいるの?どうして?いつから?」

「もえが帰ってくる少し前から」


私の問いかけに答えたのは、背後で膝立ち状態になっている黎。


「ずっとキッチンにいたの?」

「うん。ベランダから入って、もえが帰ってきたらキッチンに隠れた」

「じゃあ私と碧葉の会話、最初から聞いてた……?」

「うん。全部聞こえてた」


号泣しながらぶちまけた台詞たちを思い出していくと、あまりの恥ずかしさからうわー!っと全身を掻きむしりたい衝動に駆られる。


まさに穴があったら入りたい。


つい数分前まであんなに溢れ出ていた涙はすっと引っ込み、呆然と固まっていると「騙したみたいになってごめん」と黎が弱々しく呟いた。
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