ベイビー•プロポーズ
「ずっと、逃げててごめんね。黎が真っ直ぐ向けてくれてた気持ちに向き合わなくてごめん。こんな私のこと、ずっと好きでいてくれてありがとう」
「うん」
「多分もう、だいぶ前から、黎のことが好きだったの。弟みたいな存在だなんて思ってない」
「……うん」
「本当に、黎のことが好きだよ」
“好き“という気持ちを伝えることは決して簡単なことじゃない。いざこの言葉を口にしてみると、ものすごく勇気がいることだと分かった。
これまで黎がどんな思いで私に好きを伝えてくれていたのか、考えるだけで胸がじんわり苦しくなる。
「黎、私……私ね、」
声が揺れる。視界が揺れる。
「私、黎の彼女になりたい」
私にとって一世一代の告白。声を震わせながらも何とか言葉にすることができたことにほっとすると共に、鼻の奥がツンとしてくる。
正面をじっと見つめて黎からの返事を待つけれど、何の反応も返ってこない。
――というか、固まってる?
まるで黎の周りだけ時が止まってしまったかのよう。瞬きすらせずフリーズしている黎。
その数秒後、スローモーションのようにゆったりと瞬きを繰り返した黎の両目から、キラリと輝くものが流れた。