ベイビー•プロポーズ
真っ直ぐすぎる黎の想いに、胸がきゅんと可愛らしい音を鳴らす。
「俺、小さかった頃はずっと、18歳になったらもえと結婚できると思ってた」
――おれのみょーじ、もえにあげる
ぽつりと呟かれたその言葉に、白昼堂々プロポーズをしてきた幼き日の黎の姿が思い出される。
「今だって、できることなら今すぐもえと結婚したい。――けど、」
「……けど?」
「今の俺じゃ、もえのこと、ちゃんと幸せにできないから。だからまだ、結婚はできない」
「……」
「ちゃんと大学に行って、いいところに就職して、1人の男としてしっかり自立することができたら、もえのことを幸せにできる」
太ももの上に置いていた左手も、黎の指先に掬い取られる。両手を握り合った状態でお互いを見つめる。
「だから、もう少し、俺のこと待っててほしい」
「……」
「はやくもえに追いつけるように頑張るから、ちゃんとした大人になるから、だから、」
言葉を詰まらせ目を伏せた黎の表情は、少し強張っているようにも見える。触れ合っている指先から緊張が伝わってきた。
ドキドキ、ドキドキ、私の胸も大きな音を鳴らしている。
伏せていた目を上げた黎は、意を決したような面持ちで口を開いた。
「俺が社会人になったら、結婚してください」