ベイビー•プロポーズ

番外編1.幼き日の決意


「あれ?碧葉のお友達?」

「うん」


新しいクラスで仲良くなったあおの家に遊びに行った時、高校の制服を着たもえと初めて会った。


あの日のことは、今でも昨日のことのように思い出せる。もえの表情も、もえと話した会話も。一言一句、全て覚えている。だって……――





「きみ、すっごくかっこいいね〜!」

「……」

「睫毛ながっ!肌も白いし綺麗な顔してるなあ」

「……」


俺より目線の高いもえが、腰を曲げて俺の顔を覗き込む。
 

いち、に、さん、よん、ご、ろく、なな


目と目が合うこと7秒。もえは大きな猫目をくしゃっと細めた。
 

「本当にかっこいいね!」

「( ……かわいい )」


この日のことを忘れるはずがない。だって、この時俺は、もえに恋におちたから。


「お名前は?」

「ししどうれい」

「うわっ!名前までかっこいい!王子様みたいだね〜」

「おねーさんはだれ?」

「私は伊藤萌葉。碧葉のお姉ちゃんです」

「あおのおねーさん。………………もえ!」

「ははっ、いきなり呼び捨て〜?」

「もえってよんじゃだめ?」

「うっ、かわいい。いいよいいよ!黎くんは特別ね」

「とくべつ」

「そう特別!」

「( ……かわいい )」


走ってもいないのに心臓がどきどきしてうるさい。コートの端から端をドリブルで全力疾走してる時と同じくらい、心臓は音を鳴らしていた。
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