ベイビー•プロポーズ
「え、ちがうの?」
はてなマークが頭に浮かんで、碧葉の質問を質問で返した。
表情が乏しいせいで分かりにくく無愛想に見えるかもしれないけれど、黎は喜怒哀楽の“怒“の感情がないような、穏やかで平和な人間だと私は思っている。
怒りに支配されているところも、声を荒げているところも、今まで1度も見たことがない。
さっきも嫌いなマシュマロを食べさせられて怒ってると言っていたけど、あれは本気で怒っているわけじゃないことくらい分かっている。
好意を持ってくれているから、私に対しては度を超えて優しい黎。
黎が同年代の女子と接しているところを見たことがないけれど、きっと誰にでもそれなりに優しく接しているのだと思っていた。
「黎、萌葉に教えてやったら」
「んー」
頬杖をついたままの黎の視線が再び私に向けられて。
「もえは、俺がもえ以外の女に優しくしてても何とも思わないの?」
「何ともって、何?」
「嫉妬、しないの?」
「……、しません。しないしない、絶対しない!」
「……」
「すげー必死じゃん」
少し不満げに、より食い入るように私を見てくる黎と、鼻で軽く笑う碧葉の視線をダブルで感じながら「嫉妬なんて絶対にしません!」ともう1度強く念押しした。