ベイビー•プロポーズ
「だって、黎。萌葉の前で他の女のことすっげー甘やかしてみたら?」
「そんなのしない」
「萌葉は絶対嫉妬しないらしいし」
「な?」と口元を歪めて笑いながら碧葉がこちらを見てくるので「もちろん」と大きく頷いた。
「もえ以外に優しくするつもりないよ」
「まじで一途の極みだな」
「もえ、何か勘違いしてるみたいだから一応言っとく」
頬杖をやめた黎は、少し顔を斜めに向けて私の顔を覗き込んでくる。
「俺はもえ以外どうでもいいから、他の女に優しくなんてしてない」
「そ、そうなんだ」
「もえを試すために、わざと他の女に優しくするなんてことも絶対しない」
濁りのない純な瞳が、真っ直ぐ私を射抜いてくる。
「黎は優しいから、他の子にもそれなりに優しくしてるのかと思ってた」
「俺が優しくしてるのも、優しくしたいと思うのも、もえだけ」
「……」
「もえ以外に優しくしても意味ないし」
「……そっか」
「そもそも黎は必要以上に女と喋らないしな。ある意味俺よりドライ」
「うん」
「だから萌葉といる時の黎を学校の女子たちが見たらまじでびびると思う」
なんて反応していいのか分からず、無意識のうちに唇をきゅっと結んでいた。
「俺、もえ以外のことに労力使いたくないから」
「……」
今、この真っ直ぐな瞳を受け入れてしまったら、心が支配されてしまいそうで。黎の瞳から逃げるように、テーブルの端へと視線を落とした。