ベイビー•プロポーズ
結局その後、我が家で夕食まできっちりと食べてから自分の家へと帰っていった黎。
お母さんからまるで息子同然のような扱いを受けている黎は、単身赴任中で月に1回帰ってくるか来ないかのお父さんよりも我が家の食卓を囲んでいると思う。
「なあ、そんなに彼氏欲しいの?」
「っ!」
夕食の後片付けも一段落し、リビングのソファでくつろいでいたところ。突然後ろから碧葉に声をかけられて、びくりと肩が上がった。
「ちょっと、勝手にスマホ覗かないでよ!」
「覗いたんじゃなくて見えたの」
「いくら姉弟だからってプライバシーの侵害だからね?」
首だけを後ろに向け、お風呂上がりの碧葉へと鋭い視線を送った。
私の持つスマホに表示されているのはマッチングアプリ。私のプロフィールにいいねをしてくれた人たちの写真をスライドしていたところを、運悪く碧葉に見られてしまったのだ。
私の睨みに全く怯むことのない碧葉は、濡れたままの髪の毛をぶんぶんと振りながらソファを回り込むと、私の隣へ腰かけた。
「彼氏が欲しいんなら黎でいいじゃん」
「全然よくない」
「なんで?今見てた奴らよりも黎の方が遥かに顔いいじゃん」
「それはそうだけど……顔じゃ、ないし」