ベイビー•プロポーズ
私の右隣に席を置くのは3年先輩の沢城叶翔さん。
異動初日、鋭めの三白眼と目が合った瞬間、なんてかっこいい人なんだ…!と思わず目を奪われた。
碧葉や黎という美形に目が慣れていて、イケメンのハードルが上がってしまっている私でも惚れ惚れしてしまう。どことなく治安の悪さを感じたけれど、そのオーラにも惹きつけられた。
これはもしや、隣の席の先輩とオフィスラブ展開?と胸を躍らせ、その日のうちに椎菜に連絡をしてしまったくらい。
しかし、現実は甘くはない。
その翌日、私の左隣の席で指導係の笹本先輩に『沢城先輩ってめちゃくちゃかっこいいですよね』と何の気なしに告げると、『ああ、沢城先輩はやめといたほうがいいよ。彼女にしか興味ないしねぇ〜』と顔を歪められた。
沢城先輩に彼女がいるというのは正直驚いた。
いや、あの見た目なんだから彼女がいて当たり前なんだけど……ぶっきらぼうでクール、そして少し怖めな沢城先輩に彼女というのがなんだか想像ができなくて。
沢城先輩は社内の女子の中では密かに人気らしい。近寄りがたい雰囲気があるからあくまでも密かに。
そんな沢城先輩に真正面から立ち向かえる勇者がこの社内には数名いて、その内の1人が自分だったということを笹本先輩は教えてくれた。