ベイビー•プロポーズ
「え〜どうしよう」
「とりあえずちょっと顔見せてよ」
「はい」
プロフィールに載せてある麒麟男の写真を一通り目にした美郷は「いいじゃん!全然かっこいい!」と私にスマホを戻してきた。
「この人と黎くん、どっちがかっこいい?」
「黎」
「即答じゃん」
「え〜黎くんますます気になるわ!」
麒麟男も確かに顔はまともだなとは思った。変に加工もしていないし、普通にかっこいい人。だけど黎と比べてしまうと、当たり前に黎の方がかっこいい。
思わず即答してしまった私に、興味深々な2つの視線が一気に向けられる。
「その年下の子、萌葉のこと好きなんだろ?彼氏ほしいならその子でいいんじゃないの」
「ね!私もそう思う。とりあえず付き合ってみたらいいんじゃない?」
2人には黎のことをやんわりとしか話したことがなかった。7歳下の弟の友達で好意を持たれている、ということだけ。
「そんな簡単な話じゃないんだよねえ」
「萌葉ってそんな慎重なタイプだっけ?」
きつねを箸に挟んだ優弥が正面で首を傾げている。
「黎にはとりあえずで付き合うとかそういう中途半端なことはできないからね」
「大事なんだね」
「うーん、まあ付き合いも長いしね」
「好きなの?」
まだきつねを箸に持ったまま、私を見据えてくる優弥の質問に思わず口を噤んでしまう。真横からは美郷の視線も感じる。
「7歳も下だから。それはないよ」
そう曖昧に笑うと「そっか」と優弥はようやくきつねを口にした。
1時間の昼休憩は沢城先輩の話からいつの間にか黎の話へと変わり、終わっていった。