ベイビー•プロポーズ
私の誤タップによってマッチングが成立してしまった麒麟男もとい土井さんとは、あの後メッセージのやり取りをし始めた。
私より3歳上、やけに積極的な土井さんとの話はどんどん進んでいき、あれよあれよという間に会う約束を取り付けてしまった。
その約束の日というのが今日。
正直そこまで乗り気ではないものの、メッセージの感じでは普通に良い人そうだし、会ったらビビッとくるものがあるがしれない。と重い身体を何とか起こした土曜日の朝。
基本的に予定がなければ昼過ぎまで寝ている私。そんな私が午前中の間にリビングへ降りてきて、さらにはメイクまでしていることに、目敏く何かを察知した碧葉は黎へと連絡をしたらしく。
私がヘアセットをしようと洗面所へとやってきた時、黎もちょうど我が家へと入ってきた。
誰とどこへ行くのかとしつこく聞いてくるので「アプリで知り合った人とご飯!」と告げれば、分かりにくい黎が分かりやすく一瞬で不機嫌になった。
「どうして初対面の男と会うのに髪なんて巻くの」
「別にその人のためとかじゃないよ」
髪の毛をアレンジするのも、ばっちり化粧をするのも、可愛い洋服を着るのだって。全ては自分の気分を上げるためにしているようなもの。
少なくとも私にとってオシャレとは自分のためにするものだ。