ベイビー•プロポーズ
再び最寄駅へと戻った私は家族のグループメールに【夜ご飯はいらないよ】とメッセージを送り、その足でファミレスへと向かった。
家族連れで賑わう土曜夜のファミレス。ざわざわと騒がしい、煩いくらいのこの雰囲気が、今の私には居心地が良く感じた。
昼食を食べてからまだそんなに時間は経っていないし、お腹も空いていないので、ドリンクバーだけを頼んだ。何をするわけでもなくただただ無心で、心のHPが回復するのを待った。
2時間以上、ファミレスでぼんやりと過ごした私は、ようやく帰路へと着いていた。
今日は本当に心も身体も疲れた半日だった。
とんだ厄日だ。絶対明日、筋肉痛になってる。いや、この歳だから明後日あたりにきたりして……。
はあ、と1度大きなため息を吐き出した。家族の前では普通でいたくて、表情筋に力を入れながら家まで残り僅かな道を歩いていく。
道路の白線を辿っていた視線を正面へ向けると、我が家の前に座り込んでいる人影が見えて。
無意識に心臓を鳴らす私の足はどんどんその影に向かっていく。
蹲るように顔を伏せて座っていた人物は、私の足音に気がつくと顔をゆっくりと上げ、これまたゆっくりと立ちあがった。
「……」
「……」
お互い口を噤んだまま、黎は私を見下ろし、私は黎を見上げる。
そういえば昼間、気まずい感じで別れたんだ、と今更ここで思い出した。