ベイビー•プロポーズ

エピソード3


「あ、もえおかえり」

「ただいま~」

「遅かったね」

「帰りに人身事故があってね、電車止まってたの」

「おい黎、よそ見すんな。お前死ぬよ」

「あ、やば」

「囲まれてんじゃん」

「ごめん、もえ。ちょっと待ってて」


リビングのソファに横並びに座り、コントローラーを持ちながらテレビの大画面に食いつく大男2人。


碧葉と黎がここ最近よくやっているのがオンラインのバトルゲーム。2人は同じチームでプレイしているらしく、碧葉からの強めの喝が飛んでいる。


「……、あー終わった」

「あほ黎」

「ごめんあお」


黎が死んだらしい。


碧葉と黎がこんな風にゲームに一喜一憂している姿は2人が小学生の頃から見慣れた光景。


男の子っていくつになってもゲームが好きなんだなあ、と昔から変わらないその姿が微笑ましくなって頬を緩めていると、ソファへ背中を沈めていた黎の顔が私へと向けられる。


「もえ、デートしよ」

「はい?」


何の脈絡もなしに投げられた言葉に首を傾げていると、徐に立ち上がった黎がリビングの扉の前に立っていた私の元へと近付いてくる。


制服ではなく碧葉から借りたであろう上下黒のスウェットを着ている黎。どうやら今日は我が家にお泊りらしい。
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