ベイビー•プロポーズ
私の前に立ち、スウェットのポケットから小さい横長の紙を出した黎はそれを「見て」と手渡してくる。
期末テスト結果と書かれたその紙に並ぶ高得点に思わず目を見張った。更に右端に書かれた"学年順位1" の文字に「ええ!」と声が出る。
視線を手元から黎へと移した。
「ど、どうしたのこれ……すごいじゃん!」
「本気出してみた」
声も表情もやや得意げな様子の黎。基本的に無気力でぼんやりとしているけど、実は頭が良いというのが黎のギャップでもある。
授業中はよく寝ているし、テスト前に勉強することもない。テストが始まる前に教科書をペラペラと読むだけ。それなのに俺よりも順位はいつも上なんだよな〜、と不服そうに碧葉が言っていたことがある。
だけど今回は、テスト前に我が家で勉強をする黎の姿を何度か見かけていた。
「碧葉と一緒に勉強してたもんね。頑張ったね、黎。ほんと凄いよ」
「萌葉~俺は38位だった」
「あー……碧葉も頑張ったね」
「なんだよその微妙な反応。言っとくけど、50位以内に入るのだってかなり難しいんだからな」
ソファに寝転がっている碧葉が不貞腐れたような声を上げている。