ベイビー•プロポーズ
……確かに。私の母校でもある2人の高校は、1学年300人以上はいたはず。その中で上位に食い込むのはなかなか。過去の私なんか100位以内にすら入ったことはなかった。
本気を出した黎、恐るべし。
「ごめんごめん、碧葉も頑張ったねえ」
「そう、まーじで頑張った。だからお小遣いちょうだいよ、お姉ちゃん」
「……そういう時だけ調子いい」
「夏のボーナス出てんだろ?ならいいじゃん」
姉に集る弟は、ソファへ寝転がりながら立てた人差し指をゆらゆらと揺らして見せてくる。
まあ、確かに夏ボを家族へ還元しようとは思ってたし。1万くらいくれてやるか、と小さく息を吐いたと同時。目の前にあった黎の身体がやや右へと動いた。
私の視線の先にいた碧葉の姿が消え、視界が黒く覆われる。
さっきよりも私に一歩近付いた状態の黎。そのせいですぐ目の前には黎の胸板がある。なんならスウェット生地が若干顔へと触れている、それくらい私と黎の距離は近かった。
「もえ、あおはいいから俺のお願い聞いて」
「黎のお願い?」
その場で顔を上へ上げると、真っすぐこちらを見下ろしている黎は私の腰元へと両腕を回した。
「もえとデートしたい」