ベイビー•プロポーズ


「もえ、デート」

「うん、分かった。分かったから、この腕離して?」

「デートしてくれる?」

「……お食事なら」

「デート」


声のトーンは一定だけど、文面だけを見ればまるで駄々っ子のようにも見える黎。そんな黎からは、凄まじいくらいの圧を感じる。


「デートっていっても私と何がしたいの?」

「遠出がしたい」

「えっ……お泊り?」

「まさか。日帰りだよ」

「あ、そりゃそうだよね」


遠出=お泊りに脳内変換されていた私とは違って、至って健全な答えを即答した黎。


私の方が男子高校生並みの脳内になってる……となんだか居たたまれなくなって、黎の腕におさまっている自分の身体を気持ちばかり丸めた。


「もえ、泊まりがいいの?」

「ううん、全然、全く」

「もえがいいなら泊まりでも、」

「全然良くないから!」


黎の言葉を遮って少し強めに声を張り上げたからか、「調子にのった、ごめん」と黎は声のトーンを分かりやすく落とした。


「でも、デートはしたい」

「んー……」

「頷いてくれるまで離さないから」

「えっ、やだ!ちゃんと頷くから先に離してよ!」

「だめ。頷くのが先」

「ずるいよ黎」


眉を顰めながら恨めしく細めた目で黎を見上げる。――と、黎は無の表情を私に向けながら、首を傾げるポーズをとった。
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