ベイビー•プロポーズ

「ずるいのはもえも一緒でしょ」

「私?私の何がずるいの?」


一体私の何がずるいのか見当もつかず、見上げたままはてなマークを飛ばす。


「だってもえ、本気で俺から逃げようとしないじゃん」

「えっ……」

「この場でしゃがめば俺の腕から抜けれるし、思いっきり俺を突き放せば離れられる」

「……」

「だって俺は本気で力を入れてないから」

「……」

「それなのに俺から逃げようとしないもえはずるい」


的を得すぎた答えに、かああっと全身の熱が一気に顔面へと集中していく。


あまりの羞恥から、本気で黎の腕の中から抜け出そうと身を捩じらせたけど、私のその動きは完全に封じられた。


「っ……」

「なんでもえはそんなに可愛いの」


さっきまでは僅かな隙間があったのに、私たちの身体はぴたりと密着していた。腰元にあった黎の腕は背中に回っていて、さっきまでの比じゃないほど、強い力で抱きしめられている。


物理的にも、心理的にも、私の身体は動くことができない。完全に、7歳年下の男に翻弄されている。
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