ベイビー•プロポーズ

エピソード1


「せーの、」
「「「「「椎菜(しいな)結婚おめでとーう!」」」」」


地元にあるイタリアンバルの大部屋個室。パンパンパーンとクラッカーの弾ける音が何重にも聞こえる。


何も知らずに扉を開けた椎菜は「きゃ〜〜〜!」と可愛らしい絶叫をあげていた。


今日は来月結婚をする椎菜をサプライズでお祝いするため、高校時代のバド部の仲間で集まった。椎菜には集合時間を20分遅く伝えており、7人の大所帯で出迎えをしたのだ。


目を潤ませながら「ありがとう、ありがとう」と部屋に入ってきた椎菜をお誕生日席へ座らせ、いざ宴の始まりだ。


アルコールも大人数の飲み会も大好き。さらに今日は親友のお祝いの場ということもあって、お酒がすすむすすむ。


ビール、ビール、ビール、緑茶ハイを挟んでまたビール。美味しい料理と椎菜の惚気をおつまみに、運ばれてくるグラスをどんどん空にしていった。




「もーえーはー!今彼氏はー?」

「あれあれ、あれっしょ?あそこの区役所で働いてる人!」

「えぇ、ちょっと待って!私の記憶はキスがド下手な観月先輩で止まってるんだけど!」


舌っ足らずな会話の矛先が私へと向けられる。


「1ヶ月前に別れて今はフリーでーす。区役所は前の前の彼氏ね〜、それと観月先輩は一体いつの話よ」

「私が萌葉と最後に会ったのが去年の冬だから……半年くらい前?」

「あれ?まだ半年だっけ〜」


視界をゆらゆらと揺らしながら、へらりと目を細めた。
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