ベイビー•プロポーズ
観覧車の中は思っていた以上にゆったりとしていて広め。向かい合わせに座って何気ない会話を交わしながら、完全に日の落ちた外の風景を眺めた。
観覧車が上昇していくにつれ、目の前に広がる景色の煌びやかさが増していく。
「ねえ黎見て!すっごく綺麗!」
「……」
テンションも声のトーンもやや上がり気味の私。
この綺麗な景色を黎とも共有したくて、いつも以上に緩んでいる顔を黎の方へと向けると、返事の代わりにパシャリとシャッター音が響いた。
「え、眩し!なんで私の顔を撮ってるの!」
「笑ってるもえが可愛かったから」
「……私じゃなくて景色を撮ってよ」
外は煌びやかに輝いているけれど観覧車の中は比較的暗め。私の言葉もお構いなしにシャッターを連打する黎のスマホからは、眩しすぎるフラッシュライトが飛んでくる。
「ねえ、ほらもう少ししたら頂上だよ?黎も外見てみて?」
スマホ越しの私から外の景色へと視線を移した黎は何を思ったのか、その場で立ち上がると私の真横へと座った。
「え、なに、どうした?」
「……」
「黎?」
「……頂上」
ぽつり、呟いた黎が少し首を傾げながら私の顔を覗き込んでくる。
この暗さに目が慣れたのか、それとも距離が近くなったからか、黎の顔がさっきよりもよく見えるようになった。といっても、相変わらず表情は無ではあるけれど。