ベイビー•プロポーズ

「頂上でキスしたカップルは永遠に結ばれるらしい」

「……へ?」


頂上?キス?カップル???


多分、冗談ではない。黎なりに真剣に言ったであろう言葉に、私の目は丸まった。


「……ん?」と眉根を寄せながら首を傾げると、黎はさっきと同じ言葉を抑揚のない平坦な声で繰り返す。


「……黎、いろいろと突っ込むところがたくさんある」

「なに」

「1つ挙げるとすれば、まず私たちはカップルじゃないよ」

「……」

「それって観覧車あるあるのジンクスだけどさ、さすがに永遠に結ばれるってのはありえなくない?」


そんなジンクスを純粋に信じれるのって100歩譲っても高校生までじゃない?


――なんてやや冷めた現実的な考えが過ったけど、そもそも黎はまだ高校生だった、と頭を抱えたくなった。


「黎ってそういうの信じるタイプなんだ」

「違う。ただ縋ってるだけ」

「縋る?」

「もえとどうやったら付き合えるのか。ずっと一緒にいれるのか。これ以上どうすればいいのか分からないから、ジンクスにでもなんでも縋りたい」


黎にしては珍しい長台詞が吐かれると、真っ直ぐ向けられていた視線がゆらゆらと揺れながら僅かに下へと逸れる。


その視線が私の太腿の上に置かれた両手へ向けられるとほぼ同時、黎の両手が私の両手に重ねられた。


「もえ」

「……」

「俺のファーストキス、もらって」

「は、えっ、」
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