ベイビー•プロポーズ


黎が頭の片隅から離れてくれない、そんな状態で平日の5日間は秒で過ぎ去った。


あっという間に迎えた日曜日の文化祭当日。


卒業ぶりに訪れた母校の正門の前で、私は目の前のキラキラとした若者達の姿に圧倒されていた。
 

「ひゃー、人やっばいね」

「俺高校の文化祭とか初めて来たわ」


椎菜は旦那さんとの先約があるということで、美郷と優弥の同期2人に付き添ってもらった。今日のことをやんわり誘ってみると、2人共かなり乗り気で頷いてくれたので大感謝だ。


「あ〜生の黎くんに会えるの楽しみだわ〜」

「俺もかなり興味あるけどさ、敵認定されて睨まれたりしない?」

「睨まれることは……あるかもしれない」

「うーわ、萌葉からは少し離れておくかな」


2人のお目当ては完全に黎だ。


正門を抜けてすぐ、校舎までの道のりには焼きそばやたこ焼きといった屋台が一列に並んでいる。野球やサッカー、バスケのユニフォームを着た生徒たちが接客をしているということは、ここは部活ゾーンらしい。


呼び込みをやんわりと交わしながら、碧葉と黎のクラスである2年5組の教室へと向かう。
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