続お菓子の国の王子様 結婚に向けて
いつもと同じ優しい笑顔を向けてくれる副社長に、私は笑顔を返すことができなかった。


仁さんと副社長が仲介役を務めてくれ、
話し合いが始まった。


「美愛ちゃん......俺がまた君を傷つけていたなんて、どう謝罪すれば、許してもらえるのだろうか?」


目の前にいる雅さんからは、今までにないくらい覇気が感じられない。


彼は私が何に一番ショックを受けているのか、分かっているのか?
もちろん、他の女性と一緒に腕を組んでいるのを見たときや、帰宅したあなたから女性物の香水の香りがしたときもショックだった。けれど一番は......


頭の中で考えすぎて、何も言えずにただ雅さんを見つめている私に、あの女性が口を開いた。


「ねぇ、お嬢ちゃん、私と雅は変な関係じゃないのよ。ただのビジネスなのよ」


ふーん、ビジネスの場で腕を組んで歩くんだ。しかも、あなたの香水が彼の上着に移る距離感で。
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