The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…」
「…くっ…」
呻いたのは、ハバナの方である。
「遅いですよ、お嬢さん」
彼女の喉元に這うように、俺の仕込みナイフが鋭く光っていた。
もしハバナがトリガーに指を当てたら、その瞬間にこのナイフを引くつもりであった。
ちなみにこの仕込みナイフは、常に袖の内側に忍ばせている。マフィアのたしなみである。
ハバナが拳銃を取り出して俺の喉元に当てる、その動作はよく訓練されたものだった。
一般人であったら、驚く暇もなく脳漿を散らしていたことだろう。
でも俺にとっては、遅い。
あの忌々しい帝国騎士団の隊長連の中でも、俺の速さは随一だった。
スピードだけに関しては、俺に並ぶ者はいないのではなかろうか。
こればかりは、相手が悪かったな。
ハバナが拳銃を向けようとするのを視認してから、俺はナイフを彼女に向けた。
これだけで、相手が自分より遥かに格上だということは、理解したはずだ。
「…お前、帝国騎士団の人間か」
ハバナは普段のクールな姿をかなぐり捨て、全身から殺気を滲ませながら、憎しみのこもった声で尋ねた。
とても、ランドエルスの平和な女子学生には見えない。頭までどっぷりと黒社会に染まった、マフィアのそれ。
「良いですね、あなた…。今の方が余程魅力的ですよ」
恐らく、俺も今、彼女と同じ。
普段の姿とはかけ離れて、生き生きと輝いていることだろう。
「質問に答えろ!」
「えぇ、お答えしましょう。帝国騎士なんて、あんな糞みたいな連中と一緒にしないで頂きたい」
「…」
自分が『シュレディンガーの猫』だと知っている。それを知りうるのは、帝国騎士団くらいのもの。
ハバナはそう思っていたのだろう。だが、それは大きな間違いだ。
「…なら、お前は何だ」
「聞いたことがあるでしょう?『青薔薇連合会』」
「…!」
ルティス帝国にいるなら、彼女も耳にしたことはあるはずだ。
俺達の組織の名前を。
「同じ非合法組織同士、積もる話もあるでしょう?仲良くお喋りしましょうよ。これを降ろして」
俺の喉元に突きつけられた拳銃を指でつつく。
「…」
しかし、ハバナは険しい顔のまま動かない。
ふふふ。確かに猫らしい。可愛いくらい警戒している。
「大丈夫。悪いようにはしませんよ。それに…」
「…」
「あなたがその引き金を引く前に、あなたの首から血飛沫が飛んでいるでしょうね?」
「…ちっ」
正面から戦っても俺には勝てないと判断したらしく。
ハバナは拳銃を降ろした。
よしよし、賢い猫だ。
彼女が降ろしてから、俺もナイフをしまった。
隙を狙ってハバナがまた拳銃を向けてくる恐れもあるが、あの動きなら充分に対応出来る。
所詮、ハバナ・ユールシュルという女そのものは、全く怖くなどないのだ。
では始めようか。俺の一世一代の「告白」を。
「…くっ…」
呻いたのは、ハバナの方である。
「遅いですよ、お嬢さん」
彼女の喉元に這うように、俺の仕込みナイフが鋭く光っていた。
もしハバナがトリガーに指を当てたら、その瞬間にこのナイフを引くつもりであった。
ちなみにこの仕込みナイフは、常に袖の内側に忍ばせている。マフィアのたしなみである。
ハバナが拳銃を取り出して俺の喉元に当てる、その動作はよく訓練されたものだった。
一般人であったら、驚く暇もなく脳漿を散らしていたことだろう。
でも俺にとっては、遅い。
あの忌々しい帝国騎士団の隊長連の中でも、俺の速さは随一だった。
スピードだけに関しては、俺に並ぶ者はいないのではなかろうか。
こればかりは、相手が悪かったな。
ハバナが拳銃を向けようとするのを視認してから、俺はナイフを彼女に向けた。
これだけで、相手が自分より遥かに格上だということは、理解したはずだ。
「…お前、帝国騎士団の人間か」
ハバナは普段のクールな姿をかなぐり捨て、全身から殺気を滲ませながら、憎しみのこもった声で尋ねた。
とても、ランドエルスの平和な女子学生には見えない。頭までどっぷりと黒社会に染まった、マフィアのそれ。
「良いですね、あなた…。今の方が余程魅力的ですよ」
恐らく、俺も今、彼女と同じ。
普段の姿とはかけ離れて、生き生きと輝いていることだろう。
「質問に答えろ!」
「えぇ、お答えしましょう。帝国騎士なんて、あんな糞みたいな連中と一緒にしないで頂きたい」
「…」
自分が『シュレディンガーの猫』だと知っている。それを知りうるのは、帝国騎士団くらいのもの。
ハバナはそう思っていたのだろう。だが、それは大きな間違いだ。
「…なら、お前は何だ」
「聞いたことがあるでしょう?『青薔薇連合会』」
「…!」
ルティス帝国にいるなら、彼女も耳にしたことはあるはずだ。
俺達の組織の名前を。
「同じ非合法組織同士、積もる話もあるでしょう?仲良くお喋りしましょうよ。これを降ろして」
俺の喉元に突きつけられた拳銃を指でつつく。
「…」
しかし、ハバナは険しい顔のまま動かない。
ふふふ。確かに猫らしい。可愛いくらい警戒している。
「大丈夫。悪いようにはしませんよ。それに…」
「…」
「あなたがその引き金を引く前に、あなたの首から血飛沫が飛んでいるでしょうね?」
「…ちっ」
正面から戦っても俺には勝てないと判断したらしく。
ハバナは拳銃を降ろした。
よしよし、賢い猫だ。
彼女が降ろしてから、俺もナイフをしまった。
隙を狙ってハバナがまた拳銃を向けてくる恐れもあるが、あの動きなら充分に対応出来る。
所詮、ハバナ・ユールシュルという女そのものは、全く怖くなどないのだ。
では始めようか。俺の一世一代の「告白」を。