The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…用件は何だ」

「大体分かってるんじゃないですか?あなたもマフィアなら」

「…」

ハバナはきつく唇を噛み締めた。全く、これじゃ俺がいじめてるみたいじゃないか。

「まぁ、焦らず話しましょうよ。まずあなたのお名前を教えて頂いても?」

「…」

「ハバナっていうのは偽名なんでしょう?センスの欠片もないし」

「…ハーリア・ユーリリー」

「成程。ハーリアさん。宜しく」

やっぱりハバナは偽名だったか。うっかり本名だったら、悪いことを言ってしまったな。センスないとか。

ハーリアも相当センスないけど。

まぁ、これも偽名である可能性はある。

「お前は?」

「俺はルレイア。ルレイア・ティシェリー」

ハーリアが偽名を名乗った可能性も考慮に入れているが、それでも俺は本名を名乗っておいた。

というのも、俺は彼女達と敵対するつもりなんて、これっぽっちもないからである。

「どうして私が『シュレディンガーの猫』だと気づいた?」

まずはゆったりと挨拶をして、親睦を深めようと思っていたのに。

ハーリアはせっかちなことだ。

「うちのデータベースにアクセスした?そんなはずはない。あんなに厳重に管理しているのに…」

「そうなんですか?あれで厳重?箱庭帝国のマフィアって、意外と大したことないんですねぇ」

「…」

ハーリアがまた苛立つのが分かった。

ちょっとからかっただけなのに。

「嘘ですよ。別にハッキングした訳じゃない。あなた方の要塞の強固なことと言ったら、我々でさえ手を焼くくらいです」

「…じゃあ、何故?」

「むしろ、あなたはどうして、今日に至るまで俺がマフィアだと気づかなかったんですか?あんなに露骨に接近したのに。俺はあなたを一目見たときから、同業者だと分かりましたよ」

「…!」

ハーリアにとっては、晴天の霹靂であったらしい。

まさか、一目見ただけで自分がマフィアだとばれているとは思わなかったのだろう。

これじゃ安心して街も歩けない。

「我々が掴んでいたのは、『ランドエルス騎士官学校に箱庭帝国のマフィアが忍び込んでいるらしい』という不確かな情報だけ。その情報の真偽を探る為に俺が派遣され、そしてあなたを見つけた」

「…」

「随分ちょろかったですね。あなた、スパイにしては演技力に欠けるんじゃないですか?少なくとも…クラスメイトとは、もう少し友好的に接した方が良いと思いますよ」

多分今、プライドずたずたなんだろうなぁ。

唇を痛いほど噛み締めているその顔を見たらよく分かる。

そろそろやめておこうか。なんか可哀想になってきたし。
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