The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「どうです?今なら帝国騎士団を騙し放題ですよ。一つ乗ってみる気はありませんか?」

「…それで?断ったら…今ここで、私を殺す?」

「ふふ。よく分かってるじゃないですか」

もしハーリアがここで断るなら、彼女は敵だ。生きている価値などない。

今すぐ殺す。手榴弾なんて別に怖くない。

彼女がピンを引く前に射殺すれば、充分事足りる。

「私の一存では決められない」

「そんなことは分かってますよ。話を持ち帰るだけで良い。あなたがこの話を持ち帰って、『シュレディンガーの猫』のトップが承諾したなら、あなたは殺されずに済むでしょうね。でももし断るなら…あなたは処刑。違いますか?」

「…」

その無言が、何よりの肯定を表している。

「そして、あなたがこの場で断るのなら、今すぐ俺が殺します。今死ぬか、後で死ぬか。どっちが良いですか?少しでも生きている可能性に賭けたいなら、大人しく巣に帰って、このことを報告すべきだと思いますけど」

「…私の命は、既に『猫』に捧げている。『猫』の為に死ぬことなど惜しくはない」

「へぇ。反吐が出ますね。組織の為に死ぬ、って奴ですか」

「お前もマフィアなら、そうじゃないのか」

俺に限って、そんなことは有り得ない。

「『青薔薇連合会』と命を共にする覚悟は出来てますよ。でも…軽々しく組織の為に命を捨てようなんて言いません。組織は人が所属してこそ存続出来るもので、所属する人の血を啜ってまで存続する組織に未来はない」

命があるから、所属する組織も生きられるのだ。

死んだらおしまいだ。死んでしまったらプライドも何もない。

「生きていれば、所属する組織が変わることは何度もある。そのどれもに命を捧げたんじゃ、命なんていくつあっても足りませんよ」

俺が命を捨てるに値するのは、ルルシーだけだ。

それ以外に、命を懸ける価値を感じるものなどない。

頭の堅いハーリアに、それが理解出来るとは思えないが。

「…分かった。帰って…総帥に伝える。承諾を得られるかは、分からないが」

ハーリアは手榴弾を降ろした。
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