The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
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Ⅰ (8/39)
ガキンッ!と鈍い音がして。
俺が握っていたはずの剣が、宙を待った。
無情にも稽古場の床に落ちたそれを見て、教官が「やめ!」と叫んだ。
俺は苦々しく床に落ちた剣を拾い、対戦相手のミューリアに一礼した。
次の生徒が稽古場に入り、試合を開始するのを横目に見ながら、俺は溜め息をついた。
…これで、30連敗。
「ふふん、まだまだね、ルナニア」
「…強過ぎるでしょ、ミューリア…」
入学してから四年。幾度となくミューリアとは対戦を重ねてきたが。
…未だに、勝てる気がしない。
「さっすが、ミューリア女王様。やるねぇ」
「ったく、間違いなくお前は学年1だよ」
観戦スペースで俺達の対戦を見守っていたアシベルとエルスキーも、素直にミューリアを褒めた。
ミューリアの実力は、確かに学年では一番だろう。
男顔負けのパワーとスピード。更に女性特有の軽やかな身のこなしには、俺ではとても追い付けない。
教官も、皆ミューリアを見習えよ!と言うくらい。
「何度も言ってるでしょ、ルナニア。あんたは剣の振りが遅いのよ。おまけに動きが単調。そんなんじゃ次の太刀筋がすぐ読めるわ」
ミューリアは腰に手を当てて、得意気な顔。
ぐぬぬ…。悔しいけど、その通りだから言い返せない。
教官にもよく言われる。お前動きが遅いよ、と。
気を付けないといけないと分かってるのだが、機敏に動こうとしたら足が縺れて転けそう。
俺、もしかして帝国騎士向いてない?
こんな挙動じゃ、スピード特化型の騎士には良いカモだよなぁ。
「でも、それを言うならアシベルだって遅いじゃないですか~」
「人のことを言うんじゃないのよ。人は人でしょ」
「俺は俺だから良いんです~」
「あはは!言えてる~」
口を尖らせて言うと、アシベルが笑いながら賛同してくれた。
むっ、とするミューリアが何か言い返そうとした、そのとき。
「君達、私語は謹むべきだよ」
厳しい声と共に、我らが委員長がやって来た。
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