The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…随分と信用しているようだが。貴殿はルレイアの人質としてそんなに有効なのか?彼が、貴殿など殺されても構わないと言えば…」

「それは有り得ない。フィアンセが人質なんだ。あいつにとってはこの上なく有効な人質だ」

「そういえば、この騒動が終わったら貴殿らは結婚するんだったな」

「…」

それは…忘れて欲しいのだが?

「…とにかく、俺はルレイアへの人質としては完璧だ。もし万が一、ルレイアがお前達を裏切ったなら、俺を殺せば良い。それでルレイアは完全に無力化する」

俺が死ねば、ルレイアは生きる意味をなくすだろう。

ルレイアが死んだら、俺がそうなるように。

「…成程…。検討に値するな」

「即決しないのか?」

「さすがに時間が欲しいな。一週間ほどは」

「好きにしろ。ただ…出来るだけ早く決めてくれ」

「『シュレディンガーの猫』が『青薔薇連合会』との共闘の申し立てを拒否したら、その場合はどうなる?」

あぁ。まぁその可能性はあるな。

ルレイアは、『猫』共が断る理由はないと言っていたが。

「その場合、この話はなかったことになるだけだ。いずれにしてもお前達との協力関係は変わらない」

「そうか」

考えてみれば、おかしな話だ。

どう転んでも、こんなに策を講じても、帝国騎士団と組む事実に変わりはないのだから。

全く。このことを一般の帝国民が知ったら、腰を抜かすだろうな。

「返事をするまで、貴殿は拘束させてもらうが、それで良いな?」

「あぁ…。独房でも拷問部屋でも、好きなところに入れてくれ」

抵抗するつもりはない。手錠をかけられても文句は言わない。

ひとまずオルタンス達が結論を出すまで、俺は待つだけだ。

…ルレイア。これで、良かったんだな。

心の中で、俺は彼のことを思った。

恐らく今も危険に身を投じているに違いない。彼は今頃、何をしているのだろうか…。
< 115 / 561 >

この作品をシェア

pagetop