The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
同盟関係にあるとはいえ、なかなかに複雑な状況になりつつある今。

人質という立場になった俺は、拷問部屋に入れられようと、手錠をかけられて独房で監禁されようと文句は言えないはずだった。

…の、だが。

オルタンスが用意したのは、王宮内にある来賓用のスイートルームであった。

もとは、外国からの特使やVIPの人間が泊まる為に作られた客間である。

そんなところに、まさかマフィアである俺が招かれるなど。

厳重な身体検査は受けさせられたし、外側から鍵をかけられもしたものの、手錠も足枷もつけられなかった。

それどころか、何か必要なものがあったら何なりと申し付けてくれ、と専属の使用人までつく始末。

部屋に着くなり紅茶と茶菓子を出され、いきなりのお客様待遇に俺は呆然としてしまった。

一応同盟関係は崩れていないのだから、拷問を受けることは恐らくないだろうとは思っていたが…。それに、もし俺が拷問されたことをルレイアが後で知ったら、怒髪天突いてぶちギレるに違いないことを、オルタンスも分かっているだろうし。

でも独房で監禁されるくらいのことはされると思っていた。それが妥当なところだろう、と。

それなのに、このVIP待遇。

いまいちオルタンスの真意が読めないが…。我々はお前達が裏切らないと信じているからな、という牽制のつもりなのか…。

いずれにしても、拷問も独房入りも免れたのは素直に有り難かった。

あとはここで、『シュレディンガーの猫』と帝国騎士団がルレイアの提案を呑むか否かを決めるまで、待っていれば良い。

ただ待つだけというのは苦しいものだが…。今は他に、どうすることも出来なかった。




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