The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
私は、ルレイアと名乗ったクラスメイト…改め、『青薔薇連合会』の幹部と別れ。

バスと電車を乗り継ぎ、『シュレディンガーの猫』の仮本部がある廃ビルに向かった。

ルレイアの尾行を疑って、途中何度も乗り換えを繰り返した。

しかし…ルレイアは私の考えていることなんてお見通しなのか、尾行はしていないようだ。

私の浅はかな考えを見透かされているようで、腹が立つ。

私は苛立っていた。あまりの自分の不甲斐なさに。

私はあの男のことを、ちっとも眼中に入れてはいなかった。ただのクラスメイトの一人としか思っていなかった。

それよりむしろ、カルトヴェリア家の人間であるというアシベルの方を注視していた。最近ずっと一緒に過ごしていたのに、ルナニアという名前さえ、覚えたのは最近のことだった。

彼が、時折鋭い目付きをすることには気づいていた。でも、大したことだとは思わなかったのだ。能天気なように見えるけど、意外と芯のある人なんだろうな、としか…そんな浅はかなことしか、考えていなかった。

能天気なのは私の方だ。私がぼんやりしている間にも、彼は私を一目見てマフィアの人間だと見抜き、私に接触する為に狡猾な演技をしていた。

私は全く気づかなかった。あんなに彼の近くにいたのに。毎日顔を合わせて、話までしていたのに。

しかも、何より悔しいのは…私が彼に、勝てないということだった。

私の方が先に拳銃に手を伸ばした。あの男を射殺するつもりだった。

それなのに、彼の方が私よりずっと速かった。

おまけに、一分の隙もなかった。例え彼が素手だったとしても、私は負けていただろう。

本能的に分かった。私は、どうやっても彼には勝てない、と。

同じマフィアの人間なのに。悔しい。恥ずかしい。

しかも、私は命を救われてしまった。

彼の言ったことは事実だった。スパイであることがばれたと総帥が知れば、総帥は私を処分するはずだ。

でも、今回彼が持ちかけてきた交渉を、総帥が受ければ。

私は、その功績で命拾いするかもしれない。

ルレイアは好きなように私を殺せる。彼の組織の捕虜にそうしたように、激しい拷問を加えて、私をバラバラにして『猫』への見せしめにすることだって。

それなのに、私は命を助けられた。

敵に。あの狡猾な男に。情けをかけられた。

悔しくてたまらなかった。自分の不甲斐なさが憎かった。

けれども、自分を責めるのは後回しだった。

今は何より、総帥にこのことを伝えるのが先決だった。
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