The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
その顔を見ただけで、彼女が昨日、あの後相当絞られたらしいことが分かった。

これはこれは。お気の毒様。

是非とも優しくしてあげなくては。何せ俺は、彼女の恋人だからな。

「おはようございます、ハバナさん」

俺は、百点満点をもらえそうなくらい、にこやかに挨拶したのだが。

「…」

ハーリアは無言であった。死んだ魚の目。

おいこの女。演技下手なことは知っているが、恋人の振りくらいしろ。

契約違反だ。

「ハバナ大丈夫?どうしたの?」

ミューリアは、心配そうにハーリアの顔を覗き込んだ。

彼氏が出来た翌日に、死んだ目をしているなんて普通では有り得ない。

このままでは、昨日何かあったのではないかと疑われてしまう。

それだけは避けなければならない。ルナニアとしてのポジションを守る為には。

俺は一瞬だけ、ルレイアとしての鋭い眼光でハーリアを睨んだ。

彼女はその一瞬を見逃さなかった。

肉食獣に睨まれた草食動物のように、ハーリアは怯えたような顔をした。

そして、自分のやるべきことを理解した。

「…ごめんなさい。その…皆にどんな顔をしたら良いのか、分からなくて」

「えぇ?何で?」

「だって…こんな、毎日顔を合わせてるクラスメイト同士で…」

「やだ、ハバナったらそんなこと気にしなくても良いのに」

本当は、ただ怯えていただけなのだが。

ハーリアは、照れ隠しの為に険しい顔をしていたのだとミューリア達に誤解させるつもりらしい。

全く手のかかる女だ。

「やめてくださいよぅ…。俺まで恥ずかしくなってくるじゃないですか」

「ひゅーひゅー!新婚夫婦!ウブだねぇ」

馬鹿なアシベルが馬鹿みたいに茶化してくれたので、その場は何とか、笑って誤魔化しきった。

馬鹿は馬鹿なりに、役に立つときもあるもんだな。

それはさておき、この後もずっとこのままでは困る。

ハーリアと、話をしておかなくては。
< 125 / 561 >

この作品をシェア

pagetop