The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
その日の放課後、エルスキーもアシベルも、俺を遊びに誘ったりはしなかった。

今日の放課後はハバナさんと約束してるんですよ、と一言言うだけで、彼らは気を遣って身を引いてくれた。

素晴らしきかな。歯医者なんかよりよっぽど便利な口実だ。

「ハバナさん、帰りましょう」

俺は堂々と、教室で彼女に声をかけることが出来た。

アシベルが散々騒いだお陰で、今日だけでクラスメイトのほとんどが俺と彼女との関係を知っていた。

ハーリアはなまじ人気者だった為に、露骨にショックを受ける者もあれば、俺に妬みの視線を向けてくる者もいた。無関心を装っている振りをしている者も。

まさか彼女が、俺に脅されているだけだとは思うまいな。

普段のルナニアは、虫も殺さないみたいな顔をしているのだから。

やはり日頃の行いというのは大切だな。

「…えぇ」

俺に声をかけられて、怯えたような目をしたハーリアだが。

己の立場をよく理解しているようで、逆らったり拒否したりはしなかった。

俺は彼女の横について、教室を出た。

一緒に帰る振りをして、向かったのは昨日のカラオケボックスであった。

人目を気にせず話をするなら、ここに勝る場所はない。

ハーリアは何も言わずに、俺についてきた。

部屋を取って、個室に入るなり、俺はルナニアとしての皮を脱いだ。

「…さてと、ハーリアさん。昨日のお返事を聞かせてもらいましょうか」

「…」

ハーリアはまるで、死刑判決でも下されたかのような顔をした。
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