The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「その様子だと、どちらに転んでもあなたは死亡エンドみたいですね」

「…」

その無言が、何よりの肯定を表している。

ま、そんなことだろうと思っていたけど。

こいつの生死はどうでも良いが、やるべきことはきちんとやってから死んでもらうぞ。

「あなたのところのボスは何て?」

「…お前に直接会って、話したいと」

「へぇ…」

そう来たか。

「顔を見て話さないと納得出来ないってことですか」

「総帥はそう仰っていた。来週の月曜に…場所はこちらが、会合の一時間前に連絡する」

そりゃ徹底したことだな。

一時間前に知らされたんじゃ、暗殺の準備も出来やしない。

「…それってフェアじゃないですよね?我々は直前まで場所を知らされないのに、あなた方はたっぷり準備し放題じゃないですか」

「我々は何の小細工もしないし、出来ない。ルティス帝国はお前達のホームグラウンドなんだから」

「…まぁ良いや。俺を暗殺なんかすれば、ルティス帝国の裏社会と全面戦争に突入ですからね。あなたの総帥が余程のアホでない限り、そんな愚かな真似はしないでしょう」

おまけに今、『青薔薇連合会』は帝国騎士団とも組んでるから、帝国騎士団まで敵に回すことになる。『猫』は詰みだな。

「じゃあ、その会合まで返事は保留ってことですね」

「あぁ」

心の中で舌打ちをする。さっさと決めろよ。ルルシーが待ってるんだからさ。

あぁ、俺の愛しいルルシー。帝国騎士団でどんな扱いを受けているだろう?オルタンスも馬鹿ではないから、拷問を行ったりはしていないだろうが。

俺のルルシーを拷問なんてしてみろ。あの男、生皮剥いでやるからな。

「…話は以上だ」

もう話すことはない、とばかりに部屋を出ていこうとするハーリアを、俺は呼び止めた。

「ちょっと待った。まだ終わってませんよ」

「何だ」

「あなた、学校での態度悪過ぎですよ。俺とあなたは一応恋人同士ってことになってるんですから。あんな死体みたいな顔しないでもらえます?あと少しで死体になるとはいえ」

「…」

あ、ちょっと最後の一言は余計だったかな。

「俺のポジションぶっ壊すようなことをしたら、総帥様より先に俺が殺しますよ。良いですね?」

「…分かった」

「別に一緒に寝ろとは言いませんけどね。いや、寝たきゃ寝てあげても良いですけど。でも恋人の振りはちゃんとしてもらいます」

「…恋人の振りって…どうやったら良いんだ」

あ?まずそこからか。

面倒な女だな、こいつ…。処女か?

「仲良さそうにすれば良いんですよ。笑顔で」

「笑顔…」

「…ったく。あなた、リアルだったら絶対付き合わないタイプですよ」

こんな、若干メンヘラ拗らせたような女。アウトオブ眼中だ。

「話は以上なんで。もう帰っても良いですよ」

「…」

無言で出ていくハーリアの背中を見送り、俺がまずしたことは、カラオケ機器をタップして、『ポテサラーズ』の曲を入れることだった。

そして、ボリュームの調節ボタンに手を伸ばし、音量を上げる。

別に歌おうとしている訳ではない。あんまり意味ないけど、盗聴防止用だ。

次に、俺はルナニアではなく、ルレイアのスマホを取り出した。

いつもはエリュシアのブラジャーの内側に入れてあるのだが、今は常に持ち歩いている。

コールする相手は、ただ一人。
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