The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
前のページへ
Ⅰ (10/39)
レベルの高い騎士官学校に在籍する生徒は、大抵が幼い頃から帝王学を教え込まれてきた貴族の子女である。
一方で、ランドエルスのような、そこまでレベルの高くない騎士官学校は、貴族ではない一般の帝国民が入学する。
その為我がランドエルスでは、一般帝国民の生徒の方が多い。
けれども中には、貴族の子女も入学している。
そういう生徒は、ほとんどの場合、第一志望のレベルの高い騎士官学校に合格しなかった者だ。
「あー、うん。公立の騎士官学校は一応受けたんだけど、落ちちゃった!」
以前、それとなくアシベルにこのことを聞いてみたところ。
彼はぺろっ、と舌を出して、茶化したように答えた。
受験なんて個人的なことを聞くと、気分を悪くさせてしまうのではないかと思ったが。
アシベルの性格故だろう。彼はさっぱりとしていた。
「元々受かるとは思ってなかったんだよ。俺馬鹿だし、剣の稽古も楽しくないしさ。でも家の人が、絶対受けろ!って言うから」
「そうなんですか…」
「で、綺麗に落ちた。まぁ、試験解いてるときから、これ落ちたな~と思ってたから、ショックはなかったけどね」
アシベルは笑いながら言った。
しかし、話の深刻さを考えると、そんなに笑いながら言えることではないはずだった。
「怒られたりしなかったんですか?家の人に。勘当する、とか…」
「情けない奴だ~とは言われたけど、勘当までは言われなかったよ。そもそもうちは、伯父上以外大した騎士は出てないんだよ」
伯父上、とは先程話した、現在の帝国騎士団五番隊隊長のことである。
「伯父上には申し訳ないけどさ。俺にそんな才能はないし。そんなこととっくに分かってるから、それなら無理に頑張るより、こうして面白おかしく青春過ごす方が性に合ってる」
アシベルはへらっ、としてそう言った。
成程、彼はそのように考えているのか。
本当のところは分からない。もしかしたら本当は、伯父に申し訳ないと思っているのかもしれない。不甲斐ない自分を悔いているのかもしれない。
けれども彼は、それを人に感じさせずに軽快に振る舞う潔さがあった。
そのことが、アシベルの魅力なんだろうと。俺はそう思う。
次のページへ