The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「ところで、あなたのことは何とお呼びすれば良いんですか?」
『シュレディンガーの猫』の総帥、その名前はまだ聞かされていないが。
「そうだな…。じゃあ、X(えっくす)とでも呼んでもらおうか」
「え。何それ…。中二病?」
その年で?さすがに引くんだけど?
「本名を名乗る訳にはいかなくてな」
「へぇ…。それでX…。でも微妙に格好良くないですし、どうせ適当につけるなら、じゃあ…へのへのもへじさんとか、名無しの権兵衛さんで良いんじゃないですか?」
「…」
これには、総帥ことXさんもちょっとイラッとしたらしい。
表情には出ていないが、目を見たら分かる。
これがオルタンスと違うところだな。あの男なら、別に何でも良い、と答えることだろう。
「…君は、ルレイアだったな?本名か?」
「本名ですよ、失敬な。同盟関係を作ろうってのにXだのYだの、そんな数学みたいな呼び方は無粋というものでしょう」
「悪いが、俺の名前を教える訳にはいかない。『猫』の中でも俺はごく一部の人間にしか名前を明かしてはいないからな」
「そうですか。じゃあ、この度の同盟関係で、あなたに名前を教えてもらえるほど仲良くなることを目指しましょうか」
別に知りたくもないし、Xだろうと権兵衛だろうと、こいつのことなんかどうでも良い。
どうでも良いが、俺の策には乗ってもらうぞ。
「では早速、仕事のお話をしましょう。そこにいるあなたのスパイから、ある程度話は聞きましたね?」
「あぁ」
「なら、そのお話の通りです。我々『青薔薇連合会』は、『シュレディンガーの猫』と組んで帝国騎士団を倒したい」
「…」
…さすがに、即答はしないか。
何か言えよ。
「気乗りしませんか?悪い提案じゃないと思いますが」
「君達にとって帝国騎士団が目の上の瘤であることは分かっている。けれど、彼らを打倒したところで、君達に彼らの代わりが務まるのか?」
…随分とはっきり言ってくれる。
確かにXの言うことは正論だ。帝国騎士団を壊滅させて、その後俺達に、この国を担うだけの力があるのか。
はっきり言おう。そんなものはない。
「ありませんね。要するに俺達は、帝国騎士団を存続させたまま、彼らの全権を掌握したい訳です。俺達の傀儡政権にしたいんです。その為には、あなた方の力が必要です」
「傀儡政権、か。言いたいことは分かるが、それでも容易いことではないぞ」
「分かってますよ。だからあなた方の力を借りようとしてるんじゃないですか。『シュレディンガーの猫』の脅威的なことと言ったら、我々もよく知っているところですからね。今後の為にも、あなた方とは仲良くしておきたい」
厄介な相手なら、敵に回して苦労するより、仮初めの友情だとしても仲良くしておいた方が、流血は少なくて済む。
「俺の言ってること、間違ってますかね?」
「いや…何も間違ってはいない」
「なら、お返事を聞かせて頂けますか」
「…」
それでもXは、返事を避けた。
『シュレディンガーの猫』の総帥、その名前はまだ聞かされていないが。
「そうだな…。じゃあ、X(えっくす)とでも呼んでもらおうか」
「え。何それ…。中二病?」
その年で?さすがに引くんだけど?
「本名を名乗る訳にはいかなくてな」
「へぇ…。それでX…。でも微妙に格好良くないですし、どうせ適当につけるなら、じゃあ…へのへのもへじさんとか、名無しの権兵衛さんで良いんじゃないですか?」
「…」
これには、総帥ことXさんもちょっとイラッとしたらしい。
表情には出ていないが、目を見たら分かる。
これがオルタンスと違うところだな。あの男なら、別に何でも良い、と答えることだろう。
「…君は、ルレイアだったな?本名か?」
「本名ですよ、失敬な。同盟関係を作ろうってのにXだのYだの、そんな数学みたいな呼び方は無粋というものでしょう」
「悪いが、俺の名前を教える訳にはいかない。『猫』の中でも俺はごく一部の人間にしか名前を明かしてはいないからな」
「そうですか。じゃあ、この度の同盟関係で、あなたに名前を教えてもらえるほど仲良くなることを目指しましょうか」
別に知りたくもないし、Xだろうと権兵衛だろうと、こいつのことなんかどうでも良い。
どうでも良いが、俺の策には乗ってもらうぞ。
「では早速、仕事のお話をしましょう。そこにいるあなたのスパイから、ある程度話は聞きましたね?」
「あぁ」
「なら、そのお話の通りです。我々『青薔薇連合会』は、『シュレディンガーの猫』と組んで帝国騎士団を倒したい」
「…」
…さすがに、即答はしないか。
何か言えよ。
「気乗りしませんか?悪い提案じゃないと思いますが」
「君達にとって帝国騎士団が目の上の瘤であることは分かっている。けれど、彼らを打倒したところで、君達に彼らの代わりが務まるのか?」
…随分とはっきり言ってくれる。
確かにXの言うことは正論だ。帝国騎士団を壊滅させて、その後俺達に、この国を担うだけの力があるのか。
はっきり言おう。そんなものはない。
「ありませんね。要するに俺達は、帝国騎士団を存続させたまま、彼らの全権を掌握したい訳です。俺達の傀儡政権にしたいんです。その為には、あなた方の力が必要です」
「傀儡政権、か。言いたいことは分かるが、それでも容易いことではないぞ」
「分かってますよ。だからあなた方の力を借りようとしてるんじゃないですか。『シュレディンガーの猫』の脅威的なことと言ったら、我々もよく知っているところですからね。今後の為にも、あなた方とは仲良くしておきたい」
厄介な相手なら、敵に回して苦労するより、仮初めの友情だとしても仲良くしておいた方が、流血は少なくて済む。
「俺の言ってること、間違ってますかね?」
「いや…何も間違ってはいない」
「なら、お返事を聞かせて頂けますか」
「…」
それでもXは、返事を避けた。