The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
Xがこの話を受けるか、それとも断るか。

俺にも予測出来ることではなかった。Xの判断次第で、どちらにでも転ぶ。

断るかもしれない。断るなら、それでも良い。

そのときは、俺は今すぐ『青薔薇連合会』に帰る。ルルシーも一緒に。

そして帝国騎士団と共に、『シュレディンガーの猫』を倒す。

でも、この話を受けるなら。

そのときは、俺の計画が本格的に始動する。

そしてどちらに転んでも、『シュレディンガーの猫』の滅びに変わりはない。

「…そうだな」

Xが、どちらを選ぶか…。

「…お前はどう思う、カセイ」

これは、俺と予想していなかった。

Xはあろうことか、横にいた女に意見を求めた。

カセイって誰だ、と思ったが…Xが顔を向けたのは、ハバナ、ことハーリアだった。

おいおい、こいつ名前何個あるんだ。

今カセイって言ったよな?ということはこれが本名か。

やっぱりハーリアは偽名だったんだな。ダサいと思った。

Xに意見を求められたハーリア、ことカセイは、ぎょっとしたような顔をしていた。

どうせ死ぬ女に、何故意見を求めるのだろうか。

「…何故…私に?」

「このルレイアという男をここに連れてきたのはお前だ。つまり、この話を持ってきたのもお前だ。だからお前に聞く。どうしたら良いと思う?お前の判断に任せよう」

「…」

まさかこんな重大な決断を自分が委ねられるとは、思ってもみなかったのだろう。

カセイは呆然自失として、血の気が引いていた。

これは可哀想に。

助け船を出してやりたいところだが、俺が何か言っても火に油、だからな。

「わ、私は…」

「総帥、この女にそんな重大なことを…」

カセイに判断を委ねることに反対し、おばさんが声をあげた。

しかし。

「黙れ。お前には聞いていない」

Xは冷たく払い除けた。あくまでも、カセイの判断に任せるつもりらしい。

「どうなんだ、カセイ。受けるか、断るか?」

「…私は…」

どちらにしても自分はこの後、殺されるなら。

残される『シュレディンガーの猫』に、どんな道を残すべきなのか。

でもその道は何処を進んでも、待っているのは破滅だけ。

必ず、俺がそうしてみせる。

だから好きな方を選べば良い。どちらの滅びが良いか。

…カセイは、掠れたような声を絞り出した。





「…受ける、べきだと思います」


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