The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「おはよールナニア~」

「おはよ」

「おはようございます、二人共」

いつもはイラッとするだけのエルスキーとアシベルの挨拶だが、今日は違う。

実に晴れなかな気持ちで、彼らに挨拶を返すことが出来た。

何と言っても昨日、『シュレディンガーの猫』との交渉が成立したのだ。

ようやくこれで、本格的に動き出すことが出来る。

それなのに、アシベルはそんな幸せな俺の気分を害するようなことを口にした。

「なぁなぁルナニア。ハバナさんと何処まで進んだの?キスくらいはした?」

「は?」

「それとも、もうやることまでやっちゃったの?」

「おいアシベル。お前何聞いてんだ」

「だって気になるじゃん!」

アシベルの脳みそには、あれか。性欲しか入ってないのか?

俺でさえ、1%くらいは理性というものを持っているのに…。この男は猿も同然だな。

「そんな…何聞いてんですかあなた…。やりませんよそんなこと…」

大体、付き合うことになってから、まだ一週間足らずだぞ?

普通の高校生なら、せめて一~二ヶ月交際期間を経てからやるだろ。

これがルレイアだったら、一時間もすればやることやるけど。

あくまで俺は今、ルナニアだから。

「純情だな~ルナニア…。やっぱりハバナさんとやるのは、」

「ゲスなこと聞いてんじゃないわよ、馬鹿アシベル!」

べしっ、とミューリアの強烈な一撃が、アシベルの後頭部にクリーンヒットした。

おぉ。珍しく素晴らしいタイミング。

「いった!今の本気?本気で殴ったでしょ!」

「当たり前でしょ!そんなことよりあんた、宿題をやんなさいよ。どうせまたやってないんでしょ?」

「当たり前だよ!」

「偉そうに言うんじゃないわよ!」

べしっ、と二発目。

アシベルは半べそかきながら、エルスキーに泣きついていた。

「だって。だって気になるじゃん。昨日だって放課後デートしてたじゃん?明後日の創立記念日だって、どうせ二人でデートとかすんだろ?俺達を置いて!」

創立記念日。

アシベルに言われて、初めて思い出した。

…そういや、創立記念日が近いんだっけか。

「あ、本当だ…。忘れてました。デート誘ってみようかな…」

「覚えてなかったんかい!」

「そういえば俺達まだ、休日にデートしたことないんですよね」

まだ付き合って間もないしな。

「行ってくれば良いじゃん、何処か。多分ハバナさんも期待してるんじゃないか?」

「何処かって…。何処行けば良いんですかね?」

「そりゃハバナさんとも相談して…あ、噂をしたら来た」

エルスキーに言われて振り向くと、そこにはハバナ…いや、カセイ・リーシュエンタールが丁度、教室に入ってきた。
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