The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
カセイと呼びたいところだが…。学校では本名で呼び合う訳にはいかないからな。

しかも、恋人の演技をしなければならない。

「おはようございます、ハバナさん」

恋人にする為の、甘い笑みを浮かべて挨拶する。これでハバナが顔をしかめたりしようものなら、後でぶっ飛ばすところだったが。

「おはよう…ルナニア」

ハバナも負けじと、微笑みを称えて挨拶を返してきた。

おぉ。やれば出来るじゃないか。顔がひきつってるのが難点だが。

「今丁度、ハバナさんのこと話してたんですよ」

俺は、にこやかに会話を続けた。

「何?」

「今度創立記念日で、お休みの日になるでしょう?何処か二人で、遊びに行けたら良いかな…と思って」

「デートのお誘いだよ、デートの!」

「アシベルは引っ込んでなさいっ」

べしっ、と三発目を入れられるアシベル。馬鹿だ。

「デート…」

ハバナは少々困惑していた。学校では恋人の演技をするが、それ以外のところではその必要はない。

まぁ、その言い分は分かるが。

俺は一瞬だけルレイアの目で彼女を睨み、合わせろ、とアイコンタクトした。

ハバナはどきっ、として、それから戸惑い気味に答えた。

「う、うん…。良いけど。何処に行くの?」

全く。こんなことまで指示されないと動けないとは。

Xがハバナを処分しようとしたのも、頷けるというものだ。

「ハバナさんは何処に行きたいですか?」

「私は何処でも…」

何処でも良いとか、何でも良いとかが一番困るんだよ。

「俺も何処でも良いんですよねぇ…。何処に行くのが一般的なんですかね?」

言わずもがな、俺の中身は二十歳を越えた大人であり、現役高校生が彼氏彼女とどんな場所でデートしているのかなんて、知るよしもない。

大体、俺の高校時代は…色恋の片鱗すらない糞学校だったし。

「恋人同士のデートっつったら…定番は映画館とか、遊園地とか…」

「海とかも良くない?あとはショッピングとか!」

「安易ね、あんた達。女の子がそんな定番スポットを必ずしも好むとは限らないわよ」

え、そうなの?

「ミューリアだったら、どんな場所にデートしに行きたいんですか?」

「私だったら…そうね。案外、ちょっとお洒落なカフェでお喋りするだけ、ってのも素敵ね。本当に好きな相手とだったら、映画館や遊園地に頼らなくても喋ってるだけで楽しめるものよ」

へぇ…。使い道のない豆知識だな。

俺だったら、割と速攻でホテル入っちゃうけど。

「どうです、ハバナさん。俺とお洒落なカフェでお喋りでも」

「うん…。良いけど」

「成立しちゃった。俺達のルナニアが!三人で遊びに行こうと思ってたのに~」

「うるせーよアシベル…」

水を差す天才だよな、この馬鹿は。

ハバナと恋人の演技をするのは良いが、この馬鹿共との不毛な時間は、何とかならないものか…。
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