The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…裏切られた後、そこから、よく立ち直れたものだな」

「ねぇ、本当。自分でもそう思いますよ。すぐ立ち直れた訳じゃありませんよ?事実、俺二年間精神病院に入院してましたから」

「…」

これには、カセイも絶句であった。

え。そんなにおかしなこと言ったかな?

実は俺…あの頃のこと、あんまり覚えてないんだよな。

ただ毎日、ぼーっとしてたことは覚えてるんだけど。

「それを、今の…『青薔薇連合会』の仲間達が支えてくれたから、なんとか立ち直れました。彼らがいなかったら俺は今でも入院してたと思いますよ」

「…そう、か」

俺を何より、誰より支えてくれたルルシーがいなければ。

本当に、ルルシー様様だな。

「そんな事情があるなら…やはり、お前が帝国騎士団を恨むのは当然のことだな。」

「そりゃそうですよ。頭を下げてきたって奴らと組むなんてお断りです」

そうやって、俺は自分の話に信憑性を持たせようとした。

実際帝国騎士団への恨みは本物だし、それだけは疑いようもないが…。

「…じゃあ、今ランドエルスにいるのは辛くないのか?ランドエルスは帝国騎士を育成する為の学校なのに」

「だって、ランドエルスは…帝国騎士と言っても、お遊戯みたいなもんじゃないですか」

それにほら。二度目の騎士官学校だし。

なまじ最初にめちゃくちゃ厳しい学校にいたものだから、ランドエルスなんてぶっちゃけ、ぬるゲーなのだ。

「それはそうだが…。でも、トラウマを刺激するんじゃないかと」

「さすがにもう割り切ってますよ。お仕事の一環ですし…。大体ランドエルスは何もかもゆる過ぎるんですよ。あんな試験、ノー勉でも満点取れますし」

「お前、そんなに成績は良くなかったと思うが…あれも演技なのか」

「ずば抜けた秀才であるより、適度なアホの方が絡みやすいでしょう?スパイとしては」

馬鹿正直に手の内を見せてやることはない。

とはいえ…馬鹿に馬鹿扱いされるのは不愉快極まりなかった。だからミューリアが試験の度に俺を小馬鹿にして呆れるのは、撃ち殺したくなるくらい苛立っている。

「あなたは演技してないんですか?剣術は明らかに手を抜いてるみたいですけど、座学の方は」

「箱庭帝国では、ほとんど勉強は出来なかったから…。授業についていくのは、割と大変だ」

「へぇ…」

そういや異国人なんだっけ、カセイは。

ルティス語を流暢に喋るから気にならなかったが。

「箱庭帝国…って、どんなところなんですかねぇ…」

「…あんまり、良いところじゃないぞ」

ぽつりとそう答えるカセイは、あまり愉快そうな顔ではなかった。

あぁ、これはあんまり聞かない方が良いことなんだろうな、と思った。
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