The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
私が生まれた家庭には、私の他にも、何人かの子供達がいた。

つまり、私の兄弟達だ。

スラム街の家族によくあるように、私の家もかなりの大家族であった。

上が二人、下が四人。私を含めると、計七人の子供がいた。

うち、確かに生きていると分かっているのは、私一人だけ。

確かに死んだことを確認しているのは、五人。

そして残り一人は、生きているのか死んでいるのか、私には分からない。

調べようと思えば調べられるのだろうが…それを調べるつもりは、私にはない。

兄弟についての話は、後ですることにして。

まずは、両親についての話をすることにしよう。

私の両親。今では顔もよく覚えていないが、あの二人は、夫婦仲はとても良かった。

少なくとも、私が幼い頃は。

父は毎日貧民街で日雇いの仕事を転々として、細々と稼いでいた。

母は家で家事をしながら、内職をして家計を助けていた。

一応夫婦共働きであったとはいえ、貧民街で稼げる額など微々たるものだった。

ほとんど年子で続いていた七人の子供達と、大人二人の口を養うには、とても充分とは言えなかった。

何でそんな経済状況で、子供をポンポン次々と増やすのかと、私は甚だ疑問であるが。

それは今だから言えることで、あの場所ではごく当たり前のことだった。

生きていけるか分からないほど劣悪な環境にあると、人は、生物的な本能に準じるようになる。

両親が次々と子供を作ったのも当然というものだ。

実際貧民街では、生まれたばかりの赤ん坊が三歳の誕生日を迎えずに亡くなることは珍しいことではなかった。

むしろ、そんな話は日常茶飯事であった。

病気になっても、怪我をしても、まともな治療は受けられない。貧民街にも診療所はあるけれど、ほとんど機能してはいなかった。

ルティス帝国には、スラム街の人々のような社会的弱者に対する救済措置が、形だけは存在する。ない訳ではない。

この辺りは、私よりルレイアの方が詳しいのではないかと思うが。

けれども、貧民街にいる全ての人々を救う余裕など、国にあるはずがなかった。

行政がどのように処理しているのかは知らないが、私が知る事実として、貧民街で生まれた人間は、そのまま一生貧民街で死ぬことがほとんどであり、抜け出す術はないも同然であった。

私や…もう一人、生死の分からない兄弟のような、ごく僅かな例外を別にしたら、の話だが。
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