The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
両親が何故、私達を殺そうとしたのかは分からない。

まぁ一家心中のつもりだったのだろうけど…。もしかしたら、私達を殺した後、自分達だけ逃げようとしていたのかもしれない。

そんなことは今更、どうでも良い。

両親の意思など、私の知ることではない。

家族が皆死んでしまった。両親に至っては自分の手で殺してしまったのだ。

罪悪感はそれほどなかった。何度も言うが、先に殺そうとしたのは向こうだ。

ならこれは、正当防衛というものだ。

それよりも、明日からどうやって生きていくか。このことの方が大事だった。

私は一人ぼっちになってしまった。頼れる人間が一人もいなくなった。

兄のことが頭をよぎらなくもなかった。兄を頼っていけば良かったのかもしれないが、それは現実的ではなかった。

私は兄の居場所を知らなかった。何処かの貴族の家で働いているのは確かだろうが、それが何処の貴族なのか、名前も知らなければ住所も知らない。

それに何より、兄を頼っていったとしても…兄にもどうしようも出来なかったに違いない。

兄はあくまでも、貴族の家に仕える下働きでしかなかった。私を養うだけの余裕なんてあるはずがなかったし、兄の重荷になるだけだということは分かりきっていた。

そうしたら、また両親みたいに、私を殺そうとするかもしれない。

だったら、一人で生きていった方が良い。

もし、それが出来るならば、の話だが。

自分がこれからどうなるかなんて分からない。もしかしたら、あと数日も生きられないのかもしれない。

でも、生きている限りは、生きていかなきゃならない。

ならば先のことなんて、今は考えるべきではない。

私は即座にそう判断した。

両親、兄弟の死体はそのまま置き去りにした。父に至っては、背中に鎌が突き刺さったまま放置していた。

死体になど目もくれず、家を出た。

その日から…私は一人で生きていく決意をした。
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