The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
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Ⅰ (14/39)
「はぁっ…はぁっ…つい…た…」
ゴールに辿り着くなり、俺はがくがくする膝を押さえた。
すると俺の後ろから、へろへろになったアシベルが到着した。
「ぐぇぇ…もう無理ぃ~…」
アシベルの、この情けない声。
彼の伯父だという五番隊隊長さんが見たら、あまりの情けなさに涙が出るのではなかろうか。
けれども、俺もアシベルのことを馬鹿には出来ない。
俺だって、負けないくらいに情けない姿である。
「お前ら、まだ半分だぞ。もうへばっててどうすんだ」
俺達の中で一番に到着していたエルスキーが、呆れたように俺達を見ていた。
そんな、教官みたいなことを。
「だってぇ…」
「だってじゃない。ほら、早く降りないと怒られるぞ」
「うぅ…」
今日の身体強化訓練のメニューは、至ってシンプル。
階段ダッシュである。
六階建ての校舎の階段を、一階から六階まで駆け上がる。
上り終わったら一階まで降りる。
それを、10セット。
きつい。そして辛い。
一階と六階にはそれぞれ教官が立っているし、道中でも教官が巡回しているから、途中ちょっと歩いちゃおう、とかは通用しない。
俺達はひたすら、追いたてられた小動物のように階段を走らされていた。
「こら、そこ!いつまでも休んでないでさっさと降りろ!」
へばっている俺達に、教官がびしっ、とお灸を据えてきた。酷い。
教官が地獄の獄吏にしか見えない。
「はーい…」
へろへろの声で返事をして、エルスキーやアシベルと共に、上ってきた階段を降り始めた。
ちなみに、降りるときは歩いても良いので、束の間の休憩である。
でもわざとだらだら歩いていると怒られるので、それなりに急ぎ足で。
あぁ、もう足ががくがくして、階段から転げ落ちそう。
「うぅ…。しんどい」
「もう無理だよ~」
俺とアシベルは、半泣きで弱音を吐いているが。
「お前ら体力なさ過ぎ。休日も筋トレしろよ」
エルスキーだけは、まだまだ涼しい顔。
この男、なんでも身体を動かすのが好きなそうで。
休日でもジムに通ったり、早朝ランニングなんて青春じみたことをしているらしい。
眩しい。未来の帝国騎士の鑑だな。
「ど~せ俺は軟弱ですよ~」
「そーだそーだ。エルスキーとは違うんだ」
と、アシベルと二人で口を尖らせていたところ。
巡回していた教官に、ばったりと遭遇。
「こら!お前ら喋ってないでさっさと降りんか」
「はーい。ごめんなさい…」
何で俺達ばかり怒られるんだ。
最早涙目である。
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