The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…」

「…」

睨み合う女幹部の手には、拳銃がある。

その銃口は真っ直ぐに私の腹部に当てられており、引き金を引けば文字通り、土手っ腹に風穴開けられるだろうな。

しかし、私の手にも同じように、拳銃があった。

マフィアたる者、拳銃の一つや二つ、持っていないと。

私を小僧だと思って、油断したな。

小僧にも小僧なりの、プライドというものがあるんだ。

全く、プライドなんかにすがるとは。私らしくもない。

私はアシュトーリアさんに会ってから、すっかり自分らしさを失ってしまったものだな。

それが悪いことであるとは思わないが。

「間違いなく、あなたの方が拳銃の腕前は優れているでしょうけど…。でも、この距離なら関係ないですね。撃てば当たりますよ。お互いに」

「…自殺するつもり?」

「死にたくはないですね。だから…あなたがうっかり急所を外してくれることを祈ってます」

多分、無理だろうけどな。

引き金を引けば私は死ぬだろう。でもそれはもう、仕方ないことだ。

自ら死ぬことを選ぶなんて、私らしくない。

それでも、どうしても…彼女を裏切りたくはなかった。

「…私は、自分が生きていけそうな方に…強い方に、つくタイプなんでね」

私は拳銃の引き金に指を当てた。

「アシュトーリアさんの傍にいたら、私はきっと…色んな人に出会える。きっと色んな楽しいことが起きる。生まれてきて良かったと思える瞬間がきっと来る。私は信じてる」

いつか、きっと。

私は。

「…血を吐いて涙を涸らしながら、それでも歯を食い縛って生きてきた…その意味を、見つけることが出来ると」














だから、私はアシュトーリアさんについていく。

自分で、そう、決めたのだ。



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